ろくろのコツと失敗しない作陶術|亀井俊哉の陶芸教室
こんにちは、陶芸家の亀井俊哉(かめいとしや)です。私は20年以上、全国各地で陶芸制作や教室指導を行ってきました。陶芸の中でも「ろくろを使った成形」は非常に人気があり、同時に多くの方が苦戦する技法です。今回は、電動ろくろの基本から、失敗しないための具体的なポイント、そして作陶術の上達方法について、専門的な視点で解説していきます。
亀井俊哉のろくろ成形の魅力とは
ろくろを使った成形の魅力は、正円で美しい器が作れることです。手びねりでは表現しにくい均整の取れたシルエットが可能で、薄く繊細な器を作ることもできます。また、回転の力を活かすため短時間で形が仕上がるのも特徴です。
しかし、ろくろは「土殺し」や「芯出し」など複数の工程を正確に行わないと作品が歪んだり倒れたりします。そのため、基礎を一つひとつ丁寧に学ぶことが最も重要です。
亀井俊哉のろくろの基本工程
ろくろの作業工程は大きく分けると以下の流れになります。
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土殺し(どごろし):粘土の中の空気を抜き、均質化する工程
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芯出し:ろくろの回転軸の中心に土の芯を合わせる工程
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立ち上げ:土を上下に引き延ばしながら肉厚を整える工程
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成形:器の最終的な形を作る工程
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切り離し:作品をろくろ板から糸で切り離す工程
これらの工程にはそれぞれコツがあり、どれか一つが不十分でも作品の完成度が大きく下がります。次にそれぞれ詳しく解説していきます。
土殺しのコツ
土殺しはろくろ成形の成功を左右する最も重要な工程です。粘土の密度を均一にし、空気を抜くことで、成形中のブレや乾燥後のひび割れを防ぎます。
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両手でしっかり包み込む:手のひらと指全体で土を押さえ込み、ろくろの回転を利用して上下に練ります。
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リズムを意識する:上下に土を移動させる動きは、一定のリズムで行うと芯が安定します。
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圧力の方向を意識:下げるときは手のひらで中心に向けて圧力をかけ、上げるときは指で外側へ逃がすイメージで動かします。
土殺しが不十分だと、芯出しの段階で土が揺れ、成形時に崩れやすくなります。
芯出しのポイント
芯出しは、土の中心をろくろの回転軸に正確に合わせる工程です。これができないと作品の中心がブレてしまい、形が整いません。
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目線を低くする:横から見て土の動きを観察すると、ブレが分かりやすくなります。
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手の固定が大切:肘や手首をしっかり体に固定し、ろくろの台や足に当てて安定させます。
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外から内へ均等に圧力をかける:手のひら全体で土を包み込み、左右の手で同じ力をかけるのがコツです。
初心者の方が最も苦戦するのがこの芯出しです。ブレが収まらないときは、焦らずろくろの回転数を少し落としてやり直すことが上達の近道です。
立ち上げのテクニック
芯が出たら、土を上下に伸ばして肉厚を均一にします。
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両手を連動させる:片方の手は内側、もう片方の手は外側に添え、上下に移動しながら引き延ばします。
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力をかけすぎない:土を薄くしようとすると力をかけがちですが、強すぎると土が裂けます。
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ろくろの回転数を調整:立ち上げの初期は速め、形が決まってきたら遅くするのが安定のコツです。
この段階で肉厚が不均一だと、焼成後の強度に影響します。特に底部は厚くなりやすいため、意識して均等にしましょう。
成形の失敗例と対策
ろくろ成形で多い失敗には以下のようなものがあります。
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土が倒れる・崩れる
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原因:芯出し不足、粘土の水分が多すぎる、力を入れすぎ
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対策:芯出しをやり直す、ろくろの回転を遅くする、手の位置を安定させる
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口縁が波打つ
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原因:厚みの不均一、回転のブレ
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対策:立ち上げで厚みを揃える、最後にリムを軽く締めて形を整える
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ひび割れが生じる
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原因:土殺し不足、乾燥ムラ
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対策:土殺しをしっかり行う、乾燥時はビニールで覆い急激な乾燥を避ける
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底が重すぎる
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原因:底部の削りが不十分
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対策:削り作業で底の厚みを適正(5~7mm程度)にする
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削り(高台作り)のポイント
成形後、作品の底を削って高台を作る工程も重要です。
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半乾燥状態で行う:指で触っても形が崩れない「革の硬さ」になったら削り時です。
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回転を利用して均一に:カンナや削り道具を一定の位置に固定し、ろくろの回転で削ります。
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重心を意識:底を軽くしすぎると不安定になり、重すぎると使いづらくなります。
削りは「作品の最終調整」ともいえる大切な工程です。
水の使い方とろくろ作業の安定性
初心者が失敗しやすいポイントの一つに「水の使いすぎ」があります。
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水が多いと粘土が柔らかくなりすぎて崩れやすい
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表面がぬめり、力の伝わり方が不均一になる
ろくろ作業では、必要最低限の水で手や土の滑りを良くする程度に抑えることが大切です。
作陶術を上達させるための練習方法
ろくろは一朝一夕で上達しません。上達するためには、反復練習と失敗の分析が不可欠です。
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同じ形を複数作る練習
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湯呑や小鉢などシンプルな形を何度も作ることで、力の加減や厚みのコントロールが身につきます。
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自分の失敗原因を記録する
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崩れた、波打った、ひびが入ったなどの原因を書き出し、次回改善します。
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プロの作業を観察する
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陶芸家や教室の先生の手の動きを観察し、体の使い方を真似することが上達の近道です。
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ろくろ作陶で意識したい美的要素
陶芸は「形の正確さ」だけでなく、美しさや使いやすさも重視されます。
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口縁のラインの美しさ
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器の高さと幅のバランス
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厚みの均一性と軽さ
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手に持ったときの質感
ろくろ作業では回転の力で均整の取れた形が作れるため、細部の仕上がりで作家の個性が表れます。
失敗を恐れずに挑戦し続けること
ろくろは失敗が多い技法ですが、その過程こそが学びです。崩れてしまった作品から得られる気づきは大きく、次の挑戦に必ず活きます。
私自身も、ろくろを始めたばかりの頃は作品が立たずに崩れることが多くありました。しかし、原因を一つずつ突き止め、正しいフォームを身につけることで確実に上達していきます。
亀井俊哉|ろくろは「基本の積み重ね」で必ず上達する
ろくろの成形は一見難しそうに感じますが、
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土殺しで粘土を安定させる
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芯出しで回転軸に正確に合わせる
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厚みを均等に立ち上げる
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削りや仕上げで全体のバランスを整える
この基本を丁寧に行うことで、確実に上達していきます。
陶芸は手を動かす時間が多い分、練習した成果が形として残ります。崩れても、うまくいかなくても、挑戦し続けることが最も大切です。
ろくろの奥深い世界にぜひ触れてみてください。
陶芸教室やろくろの練習についてご質問があれば、ぜひコメントしてください。みなさんの作陶がより楽しく、上達につながるよう、今後も専門的な情報を発信していきます。
陶芸家
亀井俊哉(かめいとしや)